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ブランド ベースジェル マックスオーガニック 特許

オーガニックジェルネイルの謎

マックスオーガニックとは

マックスオーガニックから「オーガニックジェルネイル」なるものが販売されています。

以前オーガニックジェルネイルとは何かと思って調べていましたが、具体的にどうオーガニックなのかについては触れられておらず、断念していましたが、特許を検索したところ、出願されていたので、中身を確認していきたいと思います。

まず、マックスオーガニックの謳い文句を見てみましょう。


オーガニックコスメのニーズが高まり安心な化粧品が充実してきています。しかし、ネイルに関しては例外で、安全やオーガニックに配慮した製品や施術工程がほとんど存在しませんでした。そもそも、ジェルネイルは化学物質がベースになっています。ですから100%オーガニックにすることは不可能ですので開き直っている業界とも言えます。
 
その結果、爪がボロボロになった、ペラペラになったと悩みジェルネイルを休んでいるという方も増えてきました。安全にこだわりたいならネイルは止めるしかない、と考えられていたからです。
  
全ての施術工程で有害揮発性成分をなくし、アシッド=酸性度の高いジェルを不使用としノンアシッドジェルのみを使用し、有害な部分を最大限に減らしました
そしてオーガニック成分を可能な限り増やしました
 
オーガニックコスメにこだわってきた自分自身が、ネイルも安心して楽しみたいという一心から、開拓してきたノウハウです。オーガニックコスメにこだわる方たちに、100%オーガニックではなくても、少しでも多くの安心と安全をお届けしたいと願っています。製品の研究開発は時間がかかるものであり、これからもより良いものへと進化していきます。
 
オーガニックエキスを取り入れ、化粧品許可を受けたオリジナルの国産オーガニックジェルネイルを開発し、ネイル施術の全行程内でジェル以外はすべての製品が100%オーガニック植物性です。これは驚くべき方法です。
ジェルは弱酸性のノンアシッドオーガニックジェル、施術工程においてはアセトン、アクリル、キューティクルニッパーを一切使用しないで非常に美しく仕上げるオーガニックメソッド®の施術。工程は少し手間をかけますが、出来上がりは一般のジェルネイル以上に美しく仕上げることが可能です。抜群にツヤのある仕上がりで、爪の形を美しく整えながら施術を行う方法です。安全にこだわっているカラーも美しくてとても人気があります。
 
・3週間はとれません。
・自分の爪を強く補強でき、いくらでも伸ばせるようになります。
・またアレルギーも起きにくくなります。
※(体質や生活条件等により例外もあります) 


https://www.jelnail.jp/about-organic-nails/

確かに昨今、オーガニックを謳う製品や食品は多くなっている印象を受けます。

オーガニックとは

そもそもオーガニックとはどういう意味でしょうか。


農薬や化学肥料に頼らず、太陽・水・土地・そこに生物など自然の恵みを生かした農林水産業や加工方法をさします。

オーガニックが広まることにより、人や動植物、微生物などすべての生命にとって、平穏かつ健全な自然環境・社会環境が実現します。

国際的な規模で有機農業推進活動を行っているIFOAM( 国際有機農業運動連盟) は、オーガニックの原則として「生態系」「健康」「公正」「配慮」の4項目を掲げています。


http://www.jona-japan.org/about/

なんとなく「オーガニック」と聞くと、良いもののようなイメージですが、もともとの意味としては、化学農薬を使わないということのようです。

つまり決して「オーガニック」=「体に良い」という意味ではありません。

でも化学農薬を使わないのだから、体に良いのでは?という意見もあると思います。

化学者からすると、この世のすべての物質は「化学物質」であって、天然だから良い、人工だから悪いといった認識は間違っていると思います。

少し話がそれて申し訳ないですが、少し前にはちみつを赤ちゃんに食べさせてしまったというお話がありました。

もちろんはちみつは天然物です。

しかし実は毒性もあります。

あまりにも小さい子はその毒に対する免疫がない為、はちみつを食べるとむしろ健康を害してしまいます。

一方漆はどうでしょうか。

漆は皮膚に付着するだけでかぶれてしまうものです。

もちろん漆も天然物ですが、それは安全と言えるでしょうか。

そうした特定の危ないものだけを挙げて、天然物は安全ではないというのは確かにフェアではないかもしれません。

しかし一方ですべての人工的に作られた化学物質が悪とも言えないのではないでしょうか。

医薬品のほとんどは人工的に作られたものですが、それらは人々の生活を健やかに保つのに大きく貢献しているのではないでしょうか。

農薬も同じです。

単に生産者の怠慢で農薬を使うわけではありません。

もちろん安定的に生産し供給するという大事な面も農薬は担っています。

また何でも無農薬やたい肥農法を使えばよいというものではありません。

例えばたい肥農法にしても、よく使われるのは牛糞です。

糞には大腸菌など人間に害のあるものも含まれています。

こうした菌をしっかりと殺してから使わなければ、たい肥農法は逆に菌をまき散らすだけの農作物を作るだけになってしまいます。

そうした管理がちゃんとされたうえでのオーガニック製品なのかを私たちはどのように確認できるのでしょうか。

それは販売する者の責任で購入者は目隠しで選んでもすべて安全なのでしょうか。

闇雲に「オーガニック」だからというのは、少なくとも間違いであるということは是非とも覚えておいてほしいです。

マックスオーガニックの特許

話が大きく逸れてしまいましたが、マックスオーガニックが謳うオーガニックジェルネイルについて確認したいと思います。

【 請 求 項 1 】
  植 物 油 、 動 物 油 、 及 び 精 油 か ら 成 る 群 よ り 選 択 さ れ る 栄 養 成 分 を 含 む 光 硬 化 性 ジ ェ ル ネ イ ル 用 ジ ェ ル で あ っ て 、 前 記 栄 養 成 分 の 総 量 が 0 . 5 体 積 % 以 上 5 体 積 % 未 満 で あ り 、 カ ラ ー ジ ェ ル 又 は ト ッ プ ジ ェ ル で あ る 光 硬 化 性 ジ ェ ル ネ イ ル 用 ジ ェ ル 。

【 0 0 0 8 】
  本 発 明 の 光 硬 化 性 ジ ェ ル ネ イ ル 用 ジ ェ ル は 、 植 物 油 、 動 物 油 、 及 び / 又 は 精 油 を 0 . 5 体 積 % 以 上 5 体 積 % 未 満 の 量 で 含 む こ と を 特 徴 と す る 。 以 下 、 本 明 細 書 に お い て 、 植 物 油 、 動 物 油 、 精 油 、 及 び こ れ ら の 2 種 以 上 の 混 合 物 を 「 栄 養 成 分 」 と 記 載 す る こ と も あ る 。
【 発 明 の 効 果 】
【 0 0 0 9 】
  栄 養 成 分 を 0 . 5 体 積 % 以 上 5 体 積 % 未 満 の 量 で 含 む こ と に よ り 、 爪 や 皮 膚 へ の ダ メ ー ジ を 低 減 し 、 且 つ 、 ジ ェ ル ネ イ ル に 用 い る 上 で 必 要 と さ れ る 特 性 を 備 え た ジ ェ ル と す る こ と が で き る 。

特許第6483316号

どうやら植物系のオイルを含ませたジェルネイルのようです。

オイルを含ませたジェルネイルと言えば、数年前にこんな特許もありました。

【 請 求 項 1 】 ア ロ マ オ イ ル が 、 5 ~ 7 % の 量 ( 体 積 ) で 添 加 さ れ た こ と を 特 徴 と す る 、 光 硬 化 性 の ベ ー ス ジ ェ ル 組 成 物 。

【 請 求 項 2 】 前 記 ア ロ マ オ イ ル が 、 フ ラ ン キ ン セ ン ス 、 ロ ー ズ ウ ッ ド 、 イ ラ ン イ ラ ン 、 ゼ ラ ニ ウ ム 、 ラ ベ ン ダ ー 及 び テ ィ ー ト ウ リ ー か ら な る 群 か ら 選 択 さ れ る 請 求 項 1 に 記 載 の ベ ー ス ジ ェ ル 組 成 物 。

公開特許公報2016-27011

この特許は5~7%のアロマオイルを含むジェルネイルについて言及しています。

この先行技術がある為に、5%以上オーガニックジェルネイルではオイルを配合できなかったと考えられます。

これが先願主義や特許戦争と言われる話題です。

公開特許公報2016-27011の方が先に出願されているため、オーガニックジェルネイルでは、その技術を避けてしか権利を確保することができません。

厳密にいえば、先行技術はアロマオイルに限定されている為、アロマオイルと言えないオイルであればこの権利の範囲外ともいえそうですが、アロマオイルの規定は明細書中に記載されていることに基づきます。

しかし見てみると、その明細書中にはあまり列挙されておらず、どこまでがオイルに該当するか不明瞭だった為、危険回避のために5%未満としたのではないでしょうか。

またSACRAのジェルにはサクラ葉エキスが含まれており、それもオイルと言えそうです。

実際、このサクラ葉エキスがどこのくらい含まれているのかは分かりませんが、もし0.5%以上含有しているとなると、公知技術としてオイルをその量含ませることができることになり、もしかするとマックスオーガニックのこの特許は無効になるかもしれません。

オイルを含むベースジェルの効果

では実際にオイルを含むジェルネイルにどのくらいの効果があるのでしょうか。

アクリレートモノマーは重合してポリマーになる為、重合したアクリレートモノマーは溶出してくることがありません。

一方こうしたオイルは重合することがないので、ポリマー中に単に担持されているだけになります。

つまりどことも繋がりがないので溶出してくる可能性があります。

特にお風呂などでジェルネイルが温まり、ガラス転移温度を超えたりすると、その担持性は恐らく低くなり、オイルが溶出してくることは想像に難くありません。

となると、ジェルにオイルが含まれることで、せっかくプレパレーションで油分除去をしたところに、再度オイルを塗るようなことになり、ベースジェルと爪の接着面積が少なくなることから、ベースジェルの持ちは悪くなるように思います。

加えて、重合させる時には存在していたオイルが、後にお湯などで抜けてしまうと、そこは空洞になる為、水分なども入りやすくなります。

その結果、グリーンネイルなどの爪の病気にもなりやすいのではないでしょうか。

ジェルネイルはできるだけ重合度を高くして、しっかり硬化させることが重要であると考えます。

そこに重合しない成分や、むしろ重合を阻害しそうな成分をいれることは、すべてにおいてデメリットのように感じます。

一方、そういった植物オイルを入れることで、95%が元々のジェルネイルと同じであったとしても、ネーミングとして「オーガニック」を謳い、あたかも安全そうに振る舞うのは、セールスとしては上手いと感じます。

ジェルネイルを選び、使い、そしてその良い影響も悪い影響も、お客様に与えるのはネイリストです。

そしてセルフの方も、選び、使い、そして良い影響も悪い影響も受けるのは自分です。

選び・使うということは責任があるということです。

市販されているものはすべて安全で、問題のないものだけでは残念ながらありません。

良いものを選ぶ力をぜひつけて頂いて、良い製品を長く楽しんで頂ければ幸いです。

その一助となれるように私も惜しみなく知識を提供させて頂きたく存じます。

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特許

富士フイルムがジェルネイルに着手か?!

富士フイルムがジェルネイル業界に参入か?

J Plat Patで相変わらずジェルネイル関係の特許検索を行ったところ、富士フイルムの特許を見つけました。

JPA_2018123057

【要約】
【課題】硬化物の密着性に優れ、かつ、剥離性にも優れる爪化粧料、及び、上記爪化粧料を含むネイルアートキットを提供すること。
【解決手段】成分1として、メタクリルアミドと、成分2として、イソボルニルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、及び、ブトキシジエチレングリコールメタクリレートよりなる群から選ばれた、少なくとも1つの化合物と、を含むことを特徴とする爪化粧料。

【請求項1】
成分1として、メタクリルアミドと、成分2として、イソボルニルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、及び、ブトキシジエチレングリコールメタクリレートよりなる群から選ばれた、少なくとも1種の化合物と、を含むことを特徴とする爪化粧料。

ざっと見る限り、ちゃんとジェルネイルですね。

富士フイルムとは?

ご存知の通り、昔はフイルム式のカメラの最大手企業でした。

しかし、デジタルカメラの台頭により、フイルム式のカメラはどんどんと衰退していってしまいました。

そこで社運を賭けて取り組んだのが、化粧品です。

フイルムを製造する工程において、乳化や分散といった化粧品にも応用可能な技術を培っていた同社は、その技術を生かして化粧品業界に参入、かの有名なアスタリフトを作ります。

カニなどの甲羅に含まれる赤の色素成分、アスタキサンチンは抗酸化力が高いことで知られ、それによりアンチエイジング効果があるとされています。

アスタキサンチンはそのままでは油にしか溶けない為、微細化して乳化させることで、水と一緒に吸収することができるようになり、肌に浸透するようになります。

素晴らしい技術ですね。

多くの有用な成分は水溶性であったり、脂溶性であったりします。

例えば、ビタミンCは水溶性なので、水には溶けますが、細胞の中には入って行きにくいです。

一方ビタミンDは脂溶性なので、油には溶けますが、細胞の中には入って行きにくいです。

というのも、細胞ってのは厄介な構造をしておりまして、脂質二重層と呼ばれる細胞膜からできており、その構造はミセル構造のような、脂溶性部分と水溶性部分を組み合わせたような形から出来ています。

つまり、脂溶性でもあり、水溶性でもあるような性質を持たない限り、細胞の中には入って行きにくいのです。

厄介ですね。

富士フイルムのジェルはどこから販売される?

これについては、まだ私の方では確認が取れていません。

しかし、請求項に書いてある特徴のある成分が入っているジェルを見つけることができれば、それは富士フイルムが作っている可能性が高いと言えます。

※高いだけに留まるのは、他社による実施許可や、ただただ特許侵害している場合もある為です。

もし、可能であればtwitterの方に各メーカーの成分を写真にとって貰って送って頂ければ、どこか特定することができるかもしれません。

ご協力頂ければ幸いです。

富士フイルムのジェルネイルを視る

アクリルアミドを使用するというのが、特徴的ですね。

アクリルアミドとは、アクリル酸~やメタクリル酸~と同じグループですが、反応性が高く重合率がよくなる傾向にあります。

更に安全性を高める為に、メタクリルアミドにしてあるところも特徴的です。

メタクリルアミドは水素結合能が高くなるため、凝固しやすく、粘度が高くなったり、低温時に固化する懸念があるため、使いにくいですが、使えると強力なモノマーとなりえます。

そういったものを開発されたのでしょうか、素晴らしいですね。

一方で、ジメチルアクリルアミドやジエチルアクリルアミドも使用可能とされていますが、これら二種は非常に一次皮膚刺激性が高いことで知られています。

つまり接触すると炎症を起こす可能性があります。

特許上の権利範囲としてだけ取得されているのであれば、良いのですが、製品に実装されるとなると、むむと思ってしまいます。

ただ富士フイルムは非常に大きな会社ですし、化粧品も長くやられてきているので、そのあたりの知識は十分にあるのではないかと思うのですが、今後製品が出たときにまた見ていきたいと思います。

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特許からジェルネイルを視る

特許とは

特許とは、実施するための権利というよりは、実施させないための権利です。

特許を持っている=実施できる ではないということです。しかし、

特許を持っている=実施させない ということではあります。

ある会社がA+Bといった技術を、別の会社がB+Cといった技術を特許化したとして、製品はA+B+Cといった構成がベストだとすると、ある会社と別の会社はその構成で製品を販売することはできません。

お互いに「実施させない権利=特許権」を持っているからです。

つまり特許を出すのは、他社に同じような製品を販売させないということが一番大きな理由です。

ビューティガレージ

美容業界の備品類を卸している商社的な企業です。

ジェルネイルはオリジナルブランドを持っており、レイジェルとして販売されています。

そのレイジェルに関連すると思われる特許を見つけました。

JPB_0006205454

【請求項1】
クリアジェル組成物と、
ナイロンからなる繊維素材と、
顔料と、
を含有し、
前記繊維素材の含有重量%は、3~8重量%であり、
前記顔料は、前記繊維素材とは異なる色且つ乳白色及び乳白色以外の色であり、
前記顔料の含有重量%は、0.01~3.00重量%であり、
前記繊維素材は、長さ0.3~0.8mm、太さ(繊度)4d~8dであり、
前記繊維素材の含有重量%は、前記顔料の含有重量%より多い
ネイル用カラージェル。

どうやら繊維質なものを含んだジェルネイルに関する特許のようです。

おそらくこのニットベールと呼ばれるカラーに関します。

ファイバー系のカラーといえば、プリジェルからも同じような製品が発売されています。

ファーシリーズも同じようなファイバーを使用していると思われます。

どちらが先に製品化されたのかはわかりません。

ビューティガレージが先の場合、特許登録されているので、特許が公開になったときから販売されたこのプリジェルのファーシリーズの売上分の請求をされる可能性があります。

一方プリジェルが先の場合、もし先に販売していたことを証明できれば、特許を無効化させることができるかもしれません。

または実は特許の実施権をビューティガレージからプリジェルが買っており、大人の話し合い(お金のやり取り)が済んでいるのかもしれません。

ジェルネイルにおける特許

ジェルネイルにおいても特許が非常に重要であることがこれでお分かりいただけたかと思います。

特に売上の大部分を占めるカラージェルに関する特許は非常に強力です。

各メーカーの排他的特許出願がこれから加速されていくのではないかと思います。

各メーカー様は自社の製品の権利化をお忘れなく。

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どこがジェルネイルを作っているか

ジェルネイルの製造元

業界禁断テーマの一つです。

どこがどこのジェルネイルを作っているか。

出所が定かではない情報としては私もいくつか持っています。

(詳しくは「自主回収となったエースジェルの真実」をご覧ください。)

曖昧な情報をこのブログでは発信したくないので、証拠を揃えてお伝えしようと思います。

(あいまいな情報が飛び交いすぎているジェルネイル業界なので…、ノンサンディングジェルが爪を溶かすとか、化粧品だから安全とか…)

特許検索

どこが作っているかを探すには、「特許検索」しかないと思います。

多分、一般の方であればほぼ馴染みのないことかと思います。

我々研究者は、毎週欠かさず検索してるといっても過言ではありません。

私はほぼ毎日他社特許をチェックしています。

特許の検索には有料ソフトなどもありますが、特許庁の「J-Plat Pat」がタダで使えるのでお勧めです。

ここでテキスト検索や分類等、番号等で検索することができます。

かなり範囲は広くなりますが、「要約+請求の範囲」に「爪」といったキーワードで検索すると、「爪」という言葉が権利化したいことを表した文章に必ず含まれる特許を見ることができます。

結果77,590件見つかりました。

それだけ多くの特許申請が「爪」だけであります。

ここからは検索の妙になりますが、「爪」は「つめ」とも言えますし、「ツメ」とも言えます。

また「ネイル」といった言葉でも表せるので、OR検索(AorB:AかBの言葉で良い)を実施する方が漏れがなくなります。

「爪」だけでの検索では、「爪オイル」なのか「爪切り」なのか、そうしたものも含まれ、ジェルネイルにだけ絞ることは出来ていません。

そこでジェルネイルの特徴を「特許的言葉」で指定することが必要になります。

特許的言葉

なぜそんなことを考えなければならないかというと、「ジェルネイル」で検索すれば早いじゃないかと、そう思われるかもしれませんが、残念ながら皆が共通して「ジェルネイル」のことを「ジェルネイル」と特許上には記載してくれていません。

これはおそらく「ジェルネイル」の定義が曖昧だからだと思います。

「ジェルネイル」って何ですか、と問いかけた時に、範囲に漏れがなく説明できるかどうかは、怪しいと思います。

ある人に言わせればプライマーもジェルネイルかもしれません。

溶剤と光硬化樹脂を含むものもジェルネイルかもしれません。

でも、一方の人はそうではないと思うかもしれません。

そうなると、「ジェルネイル」という言葉が、何を示すのか、人によって解釈が異なることになってしまいます。

つまり、「ジェルネイル」で権利化してしまうと、ある人は「いやいや、この商品はジェルネイルではないので、あなたの特許を侵害していません」といった主張をされてしまうかもしれません。

そうしたことは争いの種になりますし、もちろん重大な損失に繋がったり、会社に体力があれば法廷で争うことで決着は付けられますが、まあそうするよりかはそんな多義的解釈ができる「ジェルネイル」という言葉をあえて選ぶ必要はないのです。

より具体的にことを表す言葉の方が適しているのです。

その一例として「光硬化性樹脂」や「光重合性樹脂」、「ラジカル性樹脂」や「反応性樹脂」といった言葉が挙げられます。

イメージとしてはジェルネイルより大きな範囲を表す言葉がこれらのワードになります。

検索ワード

検索ワードを最適化することは非常に重要です。

「爪」と「光硬化」で検索したとしても、「爪」と「光重合」と記載されている特許は見つけることができません。

「爪」「光重合」「光硬化」と記載しても、「爪」「光反応」の特許は見つけることができません。

なので、関連する思いつくワードをすべて入れてあげることが重要となります。

とりあえず、今日はテストとして「爪 つめ ツメ ネイル」と「光重合 光硬化」で検索してみました。

全部は紹介できませんが、119件ヒットしました。

上から株式会社千趣会、株式会社サクラクレパス、穗曄實業股▲ふん▼有限公司(中国でしょうか)、富士フイルム株式会社…有名な会社が多いですね。

内容まで確認しておりませんが、こうした大手企業が実はジェルネイルを作っているようです。

この特許を一つ一つ確認し、表示名称に当てはめると、どこの製品をどこが作っているっぽいことがわかります。

ぜひまずは検索をして、見てみると勉強になるかもしれません。

化学系のこともぜひ、とっつきにくいと思わず、ちゃんと説明できるネイリストになって頂き、お客様に安心して施術して頂けるようにして下さい。

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エースジェル 化粧品 回収事案 特許

自主回収となったエースジェルの真実

エースジェルの自主回収

私はメーカーサイドの研究者なので、この話題に触れて良いのか本当に悩みました。

でも、エースジェルを使って下さった方は多いですし、その影響もとても大きなものだったのでやはりちゃんと真実を知って頂くのが良いかと思いました。

順を追ってお話しようと思います。

配合が認められていない顔料

以前の記事「化粧品のジェルネイルと雑貨のジェルネイル(続き)」で触れましたが、化粧品としてジェルネイルを販売する上で避けられないルールの一つが、化粧品に使用が認められている顔料は数十種類に限定されているということです。

紅不二化学様にまとまっていますので良かったら見てください。

化粧品色素

ここに掲載されていない顔料は基本的に配合してはいけません。

ところが、今回エースジェルはこの配合してはいけない顔料を意図的ではないにしろ配合してしまった、そしてそれを把握しないまま販売を続けていた、ということが問題となりました。

実は過去にはネイルラボも同じ失敗を犯していた!

ネイルラボ プレスト製品の回収について

奇しくもネイルパートナーのページに残っていました。

ネイルラボのサイトからはどうやらその記事はもう消してしまっているようです。

汚点を隠しているかのようですね。

ネイルラボもプレスト製品に化粧品には配合が認められていない顔料を配合していたということで自主回収をしています。

この時は確か医薬品には配合可能な顔料だったので、化粧品にも使えると思っていた、といった言い訳をされていたと記憶しています。(なにせページが削除されているので、うろ覚えですみません)

杜撰ですね。

それからネイルラボでは「化粧品の規格に準拠した製品」を販売しているのかと思いきや、先日の展示会で製品をチェックした時にはまだ「ええ…」と思ってしまうような製品を販売されていたので、そういう体質なのでしょうか。

エースジェルはネイルパートナーが製造者ではない

エースジェルの裏面を見ると、製造販売元は株式会社ジュリアとなっています。

一体どんな会社なのか調べてみましたが、どうもHPなども出てきません。

化粧品を販売する為に必要な許可」という記事で説明しましたが、製造販売業は製造設備がなくても、何の知識もなくても、許可を取ることができますし、誰でもなれます。

つまりは、そういうことだと思います。

株式会社ジュリアの住所をGoogleMapで検索してみたところ、「十条ケミカル株式会社」と同じ場所にあることがわかりました。

十条ケミカルはUV硬化型のインクジェットインキなどを作っているメーカーのようです。

J-Plat Patという特許庁のHPで十条ケミカルを調べてみたところ、ありました。

特許第4981184号 光硬化型ジェルネイル用下地剤およびジェルネイル方法

詳しくはまた特許を解説する記事で見ようと思うのですが、とにかくジェルネイルを作っていることは間違いなさそうです。

つまり十条ケミカルが化粧品には使用できない顔料を配合したエースジェルを作ってしまったと考えられます。

恐らく、ネイルパートナーからは莫大な請求が十条ケミカルにはされたのではないでしょうか。かなりエースジェルは売れていたと思うので、回収費用、回収した分の製品代、今後売れるはずだった分の利益等々請求されたのではないかと…もしかしたら訴訟などになるかもしれませんね。

配合が認められていない顔料は危険?

ではその配合が認められていない顔料を含むエースジェルは危険なのか、と聞かれると、答えはイエスでもありノーでもあります。

その配合が認められていない顔料は単純に毒性や刺激性があるから配合が認められていない訳ではないからです。

ただし化粧品の原料は基本的にホルマリンなど配合禁止成分を含まないとされています。

その顔料の製造上ホルマリン等が入らないとしても、同一工場内でホルマリンが発生するものを製造すれば飛散して混入する可能性はゼロではありません。

この配合が認められていない顔料がどうしった設備でどんなところで製造された顔料なのか、その顔料には配合禁止成分や毒性・刺激性のあるものが含まれていないかが重要になると思います。

それは試験機関に依頼しない限り分かりません…ただ、そもそもジェルネイル自体が刺激性の高いものなので、数パーセント~数十パーセントしか含まれていない顔料のなかのさらに数パーセントも含まれないそういった微量成分のことを考えるよりは、ジェルネイルそのものの刺激性を考えるほうがはるかに有意義だと思います。

ジェルネイル自体は安全なものではありません。

爪という死んだ細胞に乗せるから影響がないのであって、生きた細胞である皮膚の上に乗せたりすれば含んでいる顔料が化粧品か化粧品でなかろうが人によっては炎症を起こす、またはアレルギーになる可能性は高いと言えます。

ジェルネイルをする上でそれは避けられない刺激性・皮膚感作性です。

それを理解した上では、そもそもジェルネイル自体が安全ではないので、エースジェルが安全かどうかは、あまり大きな意味を持たないようにも思います。

新しい化粧品の分野:ジェルネイル

ジェルネイルはまだまだ比較的新しい分野です。

化粧品に精通している資生堂さんやロレアルさんが作っている訳ではありません。

むしろ今まで化粧品などを作ってこなかったメーカーの方が多いのではないかと思います。(光硬化性樹脂という製品の性質上)

そうなると化粧品の知識が不足し、こうした事態が起きてしまうのではないかと思います。

より安全・安心なジェルネイルを作る為にも、この業界自体の成長が必要ですが、そのためには価格だけに囚われて、安かろう悪かろうの製品を購入しないという商品者の意思も必要です。

安全性の試験をしっかりとし、品質管理を十分にした製品は、やはりコストがかかってしまいます。

1個300円では赤字になってしまいます。

高いものにはそれだけの価値もちゃんとあります。

ぜひ製品の良し悪しを見極める力を身に着けていただいて、安全・安心なジェルを楽しんでください。