エースジェルの自主回収
私はメーカーサイドの研究者なので、この話題に触れて良いのか本当に悩みました。
でも、エースジェルを使って下さった方は多いですし、その影響もとても大きなものだったのでやはりちゃんと真実を知って頂くのが良いかと思いました。
順を追ってお話しようと思います。
配合が認められていない顔料
以前の記事「化粧品のジェルネイルと雑貨のジェルネイル(続き)」で触れましたが、化粧品としてジェルネイルを販売する上で避けられないルールの一つが、化粧品に使用が認められている顔料は数十種類に限定されているということです。
紅不二化学様にまとまっていますので良かったら見てください。
ここに掲載されていない顔料は基本的に配合してはいけません。
ところが、今回エースジェルはこの配合してはいけない顔料を意図的ではないにしろ配合してしまった、そしてそれを把握しないまま販売を続けていた、ということが問題となりました。
実は過去にはネイルラボも同じ失敗を犯していた!
奇しくもネイルパートナーのページに残っていました。
ネイルラボのサイトからはどうやらその記事はもう消してしまっているようです。
汚点を隠しているかのようですね。
ネイルラボもプレスト製品に化粧品には配合が認められていない顔料を配合していたということで自主回収をしています。
この時は確か医薬品には配合可能な顔料だったので、化粧品にも使えると思っていた、といった言い訳をされていたと記憶しています。(なにせページが削除されているので、うろ覚えですみません)
杜撰ですね。
それからネイルラボでは「化粧品の規格に準拠した製品」を販売しているのかと思いきや、先日の展示会で製品をチェックした時にはまだ「ええ…」と思ってしまうような製品を販売されていたので、そういう体質なのでしょうか。
エースジェルはネイルパートナーが製造者ではない
エースジェルの裏面を見ると、製造販売元は株式会社ジュリアとなっています。
一体どんな会社なのか調べてみましたが、どうもHPなども出てきません。
「化粧品を販売する為に必要な許可」という記事で説明しましたが、製造販売業は製造設備がなくても、何の知識もなくても、許可を取ることができますし、誰でもなれます。
つまりは、そういうことだと思います。
株式会社ジュリアの住所をGoogleMapで検索してみたところ、「十条ケミカル株式会社」と同じ場所にあることがわかりました。
十条ケミカルはUV硬化型のインクジェットインキなどを作っているメーカーのようです。
J-Plat Patという特許庁のHPで十条ケミカルを調べてみたところ、ありました。
特許第4981184号 光硬化型ジェルネイル用下地剤およびジェルネイル方法
詳しくはまた特許を解説する記事で見ようと思うのですが、とにかくジェルネイルを作っていることは間違いなさそうです。
つまり十条ケミカルが化粧品には使用できない顔料を配合したエースジェルを作ってしまったと考えられます。
恐らく、ネイルパートナーからは莫大な請求が十条ケミカルにはされたのではないでしょうか。かなりエースジェルは売れていたと思うので、回収費用、回収した分の製品代、今後売れるはずだった分の利益等々請求されたのではないかと…もしかしたら訴訟などになるかもしれませんね。
配合が認められていない顔料は危険?
ではその配合が認められていない顔料を含むエースジェルは危険なのか、と聞かれると、答えはイエスでもありノーでもあります。
その配合が認められていない顔料は単純に毒性や刺激性があるから配合が認められていない訳ではないからです。
ただし化粧品の原料は基本的にホルマリンなど配合禁止成分を含まないとされています。
その顔料の製造上ホルマリン等が入らないとしても、同一工場内でホルマリンが発生するものを製造すれば飛散して混入する可能性はゼロではありません。
この配合が認められていない顔料がどうしった設備でどんなところで製造された顔料なのか、その顔料には配合禁止成分や毒性・刺激性のあるものが含まれていないかが重要になると思います。
それは試験機関に依頼しない限り分かりません…ただ、そもそもジェルネイル自体が刺激性の高いものなので、数パーセント~数十パーセントしか含まれていない顔料のなかのさらに数パーセントも含まれないそういった微量成分のことを考えるよりは、ジェルネイルそのものの刺激性を考えるほうがはるかに有意義だと思います。
ジェルネイル自体は安全なものではありません。
爪という死んだ細胞に乗せるから影響がないのであって、生きた細胞である皮膚の上に乗せたりすれば含んでいる顔料が化粧品か化粧品でなかろうが人によっては炎症を起こす、またはアレルギーになる可能性は高いと言えます。
ジェルネイルをする上でそれは避けられない刺激性・皮膚感作性です。
それを理解した上では、そもそもジェルネイル自体が安全ではないので、エースジェルが安全かどうかは、あまり大きな意味を持たないようにも思います。
新しい化粧品の分野:ジェルネイル
ジェルネイルはまだまだ比較的新しい分野です。
化粧品に精通している資生堂さんやロレアルさんが作っている訳ではありません。
むしろ今まで化粧品などを作ってこなかったメーカーの方が多いのではないかと思います。(光硬化性樹脂という製品の性質上)
そうなると化粧品の知識が不足し、こうした事態が起きてしまうのではないかと思います。
より安全・安心なジェルネイルを作る為にも、この業界自体の成長が必要ですが、そのためには価格だけに囚われて、安かろう悪かろうの製品を購入しないという商品者の意思も必要です。
安全性の試験をしっかりとし、品質管理を十分にした製品は、やはりコストがかかってしまいます。
1個300円では赤字になってしまいます。
高いものにはそれだけの価値もちゃんとあります。
ぜひ製品の良し悪しを見極める力を身に着けていただいて、安全・安心なジェルを楽しんでください。