ソークオフとは
ジェルネイルは光硬化性の樹脂でできており、言えばプラスチックでコーティングするようなものです。
身の回りにある光硬化性樹脂でコートされた製品で言うと、iPhoneとかのスマホの画面なんかも光硬化性樹脂(ジェルネイルとほとんど一緒の材料)で作られていたりします。
そんなコーティングが簡単に剥がれることはなく、爪からジェルネイルを取る為の操作をソークオフと呼び、アセトン等でコーティングを浸し、浮いてくるのを10分~20分くらい待つ必要があります。
スマホの画面を無理やり剥がしたら、スマホ自体壊れそうですよね。
ジェルネイルも無理やり剥がしたら爪が傷んでしまいます。
マニキュアとジェルネイルの違い
では、なぜアセトンにジェルネイルを浸すと、爪から取ることができるのでしょうか。
マニキュアは除光液で擦るだけで簡単に落ちるのに、なぜジェルネイルは簡単に落ちないのでしょうか。
そもそもマニキュアはもともと硬化してあるものを、有機溶剤に溶かしています。
ペンキとかマジックなんかと似たような発想です。
なので、出来上がった膜自体が脆く、爪でひっかいたりするだけで剥がれたりしてしまいます。
一方でジェルネイルは爪の上で光硬化反応が進行し、重合します。
つまり塗った分すべてが一枚の膜のようになります。
なので爪でひっかいたりしても、スマホの画面を引っかくのと同じように剥がれるといったことはありません。
ソークオフの原理
ではなぜアセトンに浸しておくとジェルネイルを剥がすことができるようになるのでしょう。
光硬化によって出来上がったジェルネイルは一見固いプラスチックと同じようですが、プラスチックとして売られているものと比べると非常に柔らかい分類です。
柔らかいとうことは、モノマーが重合してできあがったポリマーが流動的であると言えます。
ポリマーが流動的であるということは、つまり隙間もあるということです。
この隙間にアセトンが入り込むことによって、ポリマー同志のくっつきが弱まり、膜自体が柔らかくなります。
これを膨潤すると言います。
そうなることで、爪とのくっついていたポリマーも徐々に離れ、爪から剥がすことができるようになります。
ソークオフを早くする為には
つまりジェルネイルの中にアセトンが少しでも早く入り込んでくれれば、ソークオフを早くすることができます。
ではどうやって早く入れ込むかですが、アセトンはそのまま液体の状態でも硬化したジェルネイルに入っていくと思いますが、それ以上に気体になって入り込んでいくと思います。
アセトンの揮発は室温で十分起きますが、やはり温めるともっと早くなるので、アセトンを浸した上からハンドウォーマーなどで温めるとより早くとれるようになると思います。
逆に冬は指先が冷えているので取れにくくなると思います。
それと爪先は指から出ている分、体温がほとんどかからないので取れにくくなってしまいます。
しかも爪先は水分が少ないので脆く、二枚爪や欠けを起こしやすいので十分注意してソークオフする必要があると思います。
アセトン以外でのソークオフ
いくつかのメーカーからはアセトン以外のエタノールとかでソークオフできるジェルも販売されています。
化粧品研究者としては、それは確かに有機溶剤であって、樹脂膜に浸透するものであれば、メタノール(飲むと目が失明します)でも、イソプロパノール(手消毒用のアレ)でも落とせるとは思いますが、先ほど申し上げた通り、気化して浸透することが大事なので、アセトンよりは単純に遅くなります。
それでも、アセトンの油脂水分全部持っていくぜ、といった強い力が苦手な人には良いかもしれません。
アセトン以外ではないですが、やはり極限まで薄く削るといったことも良い方法だと思います。
それだけ浸透させる力が不要になるので、早く取れます。
さっと削って長く置くよりは、時間をかけて削って少し置く方が、体への負担は間違いなく小さいです。
身体的苦痛という意味では削られる時間は、多少苦痛かもしれませんが…。
これからのソークオフに求められること
アセトン以外のマイルドな有機溶剤で(できれば水で!でも生活水で落ちてしまうのでダメですね)、より短時間で、できるだけ削らずソークオフできることが間違いなく望まれていることだと思います。
それを実現させるべく私もさらなるジェルネイルの開発に取り組んでまいります。
実は素晴らしい材料が見つかり、それをジェルネイルの材料とすることでソークオフを1分くらいにしてしまうものがあります。
これを今すぐにでも商品化したい気持ちは山々なのですが、安全性や安定性、持ち、硬化性、層関相性など様々な検討をしなければなりません。
そのためにはもう少し時間がかかりそうですが、できるだけ早くお届けできるように頑張りますので、楽しみにして下されば幸いです。